やりたいことを探しているあなたへ
「何かしたい。でも、何をしたいのか分からない」
そんなふうに感じているあなたは、決して一人じゃありません。
周りの人が自分の夢に向かってがんばっているように見えると、「どうして自分には見つからないんだろう」と焦ってしまいますよね。
SNSではキラキラした成功例ばかりが流れてきて、「好きなことを仕事にしてます」「これが私の天職です」なんて言葉を目にするたびに、自分だけが取り残されたような気持ちになるかもしれません。
でも、やりたいことが見つからないのは、あなたの中に情熱が足りないからでも、努力が足りないからでもありません。
もしかしたら、知らず知らずのうちに“ある思い込み”に縛られてしまっているだけかもしれません。
今回は、やりたいこと探しを難しくしてしまう「5つの思い込み」を紹介します。
まずはその思い込みに気づくことから、自分の心に素直になるヒントを見つけていきましょう。
思い込み1:「一生続けられること」でなければならない
「これは一生の仕事にできるかな?」
「この先何十年もやっていけるかな?」
やりたいことを見つけようとするとき、ついこんなふうに考えていませんか?
でも、それこそが、やりたいことを見つけにくくしてしまう原因のひとつです。
たとえば、あなたが今30歳だとします。
もし80歳まで生きるとしたら、あと50年もある。
この先の50年で、世の中がどれだけ変わるか、少し想像してみてください。
今から50年前の1970年代には、スマートフォンもインターネットもAIもありませんでした。
SNSもリモートワークもYouTubeも、インフルエンサーという職業さえ存在していません。
連絡手段や交通手段も限られていたし、女性の生き方や扱われ方も今とはずいぶん違います。
50年という時間の中で、社会も働き方も価値観も、驚くほど変化しているのです。
だからこそ、「一生続けられるやりたいこと」を今の時点で見つけるのは、ほとんど不可能に近いこと。
無理に“将来性”や“安定性”を考えすぎると、本来の「やってみたい」という気持ちにブレーキをかけてしまいます。
大切なのは、「今の自分が少しでも心惹かれること」を選んでみること。
それをずっと続ける必要なんて、どこにもないのです。
時代の流れや自分の心が変われば、やりたいことが変わるのは当たり前。
むしろその変化に柔軟であることこそが、人生をしなやかに生きる力になります。
思い込み2:「人の役に立つこと」でなければならない
「誰かの役に立つことじゃないとダメなんじゃないか」
そんなふうに考えるのは、とても素敵なことです。
でもその思いが強すぎると、逆に自分のやりたいことが見えにくくなってしまうこともあります。
「これは人のためになるのか」
「社会にとって意味があるのか」
そんなふうに、自分の興味より“立派さ”を優先してしまうと、本当の気持ちにブレーキをかけてしまいます。
たとえば、あなたがふと興味を持ったことが、ゲームやアニメ、アイドルだったとして。
「こんなことをやって何になるんだろう」と感じるかもしれません。
でも、それを好きな人は確実にいます。
それに夢中になれる人がいて、それを仕事にしている人がいて、それに支えられて元気になる人もいる。
最初から「人のためになること」を探さなくていいのです。
むしろ、自分が楽しいと感じること、やってみたいと思えることを大切にすることこそ、長く続くエネルギーになります。
そして不思議なことに、自分の心に素直に行動している人ほど、結果的に誰かに喜ばれたり、感謝されたりすることが多いのです。
人のために生きることは、まず「自分のために生きること」から始まる。
そんなふうに考えてみても、いいのではないでしょうか。
思い込み3:「とにかく行動」と思っている
「やりたいことを見つけるには、とにかく動かなきゃ」
そう思って、いろいろと行動してみるが、それでも「これだ」というものに出会えない。
そんな経験、ありませんか?
毎週のようにセミナーや勉強会に参加したり、異業種交流会やパーティーに顔を出して人脈を広げようとしたり、気になる資格講座をいくつも申し込んでみたり。
もちろん、それが明確な目的や純粋な興味からくる行動であれば、とても価値のあることです。
でも、どこかで「このままじゃ何も見つからない」という焦りから動いている場合、どれだけ行動しても、心の中のモヤモヤは晴れないままかもしれません。
やりたいことが分からない理由は、行動が足りないからではなく、「選択肢が多すぎる」ことにある場合もあります。
情報も経験も増えすぎると、かえって迷いが深くなるのです。
そんなときに必要なのは、もっとインプットすることではなく、「自分が何に心を動かされるか」を見つけること。
それは外の世界ではなく、自分の中にしかありません。
「どんな瞬間にワクワクしたか」
「誰かのどんな生き方に憧れたか」
そうした自分の感情の揺れを丁寧に振り返る時間が、選択の軸を育ててくれます。
行動すること自体が悪いわけではありません。
でも、“とにかく動かなきゃ”という焦りに飲み込まれてしまうと、本当に大切な感覚を見失ってしまうこともあるのです。
思い込み4:仕事にできなければ意味がない
「それって仕事にできるの?」
「稼げないなら、やっても意味ないよね」
そんな声が、周囲からも、自分の中からも聞こえてくることがあります。
好きなことや興味があることがあっても、「お金にならない」「生活できない」という理由で、心の奥にそっとしまってしまう──そんな経験、あるのではないでしょうか。
でも、やりたいことと、それをどう実現するかは、まったく別の話です。
やりたいことは“自分の中”にあり、それをどう形にしていくかは“社会の中”にあります。
たとえば、「絵を描くのが好き」でも、「それで食べていくなんて無理」と感じて諦める人は多いかもしれません。
でも、イラストレーターになるだけが選択肢ではありません。
SNSで作品を発信したり、グッズにして販売したり、仲間と展示を企画したり。
社会の仕組みと組み合わせれば、意外と方法はたくさんあるのです。
大切なのは、「やりたいこと=仕事にしなきゃ」と思い込まず、まずは自分の“好き”に素直になること。
そこから少しずつ、「どうすれば続けられるか」「形にできるか」を探っていけばいいのです。
むしろ、最初から「仕事にしなければ」と気負ってしまうと、本来の楽しさや熱量が薄れてしまうこともあります。
「好きだけど、今は仕事にしない」
そんな選択だって、立派なひとつのあり方。
やりたいことに出会った瞬間を、大切に温めてあげるところから、すべては始まっていきます。
思い込み5:「これが天職だ!」という出会いを待つ
「これが私の天職だ!」と運命的な“やりたいこと”に出会えたらきっとわかるはず。
そんなふうに、心のどこかで奇跡のようなひらめきを待っていませんか?
もちろん、「これしかない!」と思えるようなことに出会える人もいます。
でも実際には、多くの人が最初から“確信”を持って始めているわけではありません。
たとえば、今は自分の道を見つけて活躍している人たちも、最初は「なんとなく面白そう」「やってみたら楽しかった」という小さなきっかけから始めていることがほとんどです。
SNSで人気の発信者も、フリーランスで自由に働く人も、誰かの役に立つサービスを作った人も、最初は「ちょっと気になる」「試してみたい」から始めたにすぎません。
その小さな一歩を続けていく中で、まわりに感謝されたり、自分の中に喜びや手ごたえを感じるようになって、「あ、これって自分に合ってるのかも」と思えるようになっていくのです。
つまり、“やりたいこと”とは、最初から運命的に出会うものではなく、やっていくうちに“やりたいことになっていく”もの。
「まだ見つからない」と感じているなら、もしかすると“運命的な出会い”を待ちすぎて、最初の一歩を踏み出せずにいるのかもしれません。
そんなときは、「ちょっと面白そう」くらいの軽やかな気持ちで、手を伸ばしてみてください。
その一歩が、未来のあなたにとって大切な道へとつながっているかもしれません。
迷ったときは「思い込み」を手放してみて
やりたいことを見つけるのは、とても個人的で繊細なプロセスです。
周りと比べたり、正解を探しすぎたりすると、かえって遠回りになってしまうこともあります。
今回ご紹介した5つの思い込み──
- 一生続けられることでなければならない
- 人の役に立つことでなければならない
- とにかく行動・インプットしなければならない
- 仕事にできなければ意味がない
- 天職との運命的な出会いがあるはず
これらはどれも、一見もっともらしく聞こえるからこそ、知らず知らずのうちに私たちの思考を縛ってしまいます。
でも実は、そのどれもが「やりたいこと」を遠ざけてしまう原因になっているのです。
まずは、「見つからないのは私のせいじゃない」と、自分を責めることをやめてあげてください。
やりたいことは、完璧な正解を見つけるものではなく、「今の自分にとって、ちょっと心が動くもの」を見つけていく旅のようなもの。
焦らなくても大丈夫。
他の誰かのペースに合わせなくていい。
あなたの“ちょうどいいスピード”で、少しずつ見つけていけばいいんです。
思い込みをひとつ手放すたびに、視界は少しずつクリアになっていきます。
そしてきっとその先には、「これならやってみたいかも」と思える自分らしい選択が、ちゃんと待っていてくれるはずです。